主教メッセージ 「日本聖公会第65(定期)総会を前に」

「日本聖公会第65(定期)総会を前に」

 コロナウイルス感染症の収束が未だ見られない中、初のことですが10月27日(火)~29日(木)オンライン形式で日本聖公会第65(定期)総会が開催されます。今回は26の議案が協議されますが、その中で特に三つの重要な議案について記したいと思います。

1「法規一部改正」の件

 「宣教協働区・伝道教区制」という、教区制の改革を目指すものが主教会より出されます。その提案理由の中、以下のように記されています。
 「本議案が提起する歴史的とも言える決断は、今後様々なレベルにおける具体的かつ丁寧な協議の積み重ねを必要としている。そしてその議論の中には、より幅広い信徒の奉仕職の在りようの模索が含まれるだろう。今や私たちは、この時を主が与えたもう時と捉え、困難な経験へと共に踏み出す事を求められている。それは、私たちにとって挑戦的で創造的な旅の始まりとなるだろう。主教会は、日本聖公会が日本社会における責任ある福音宣教を、今後も継続的・発展的に担い得る器であり続けるために、この議案を提出する」
 自教区の為だけでなく日本聖公会全体を一緒に考え、日本聖公会全体の宣教活性化のため、他教区と協働すべく複数教区による宣教協働区を設け、詳細は協働区に置かれる協働委員会で協議していくというものです。
 東京は日本の首都であり大都会ですが、広く日本全体を見渡す時、また日本における宣教という、キリストの教会に託されている働きを考える時、私たち東京教区にとって他教区に聴き、学ぶこと、協働していくことも決して少なくないと思えます。また、この提案は、これまでの日本聖公会の在り方を大きく変えていこうとするものであり、当然そこには不安や困難、戸惑いも伴い、今後修正等も生じ得ますが、「神様の働きの器」として活力が与えられることを祈りたいものです。

2 「2022年宣教協議会開催」の件

 10年前「いのち、尊厳限りないもの―宣教する共同体のありようを求めて」と題して宣教協議会が開催されました。しかし、当初の開催目的は「信徒減少・高齢化、聖職者不足、教会建物の老朽化、財政の逼迫」「社会的に弱い立場におかれている人びとへのケア」「戦争責任を告白する日本聖公会が平和の器として用いられること」でしたが、東日本大震災、福島第一原子力発電所事故に通して、「絶望の内にある人びとのかすかな声に耳を傾け、声を出せない人の『声』となっていくこと」「希望を奪われた状況の中に生きる人々に対して『にもかかわらず』神の祝福“<いのち>の喜び”を語り続けることの大切さを学び、日本聖公会の宣教の原点は、「教会内の牧会はもちろん、教会のある地域全体に対する牧会的働きを丁寧に実践していくこと」「地域にある課題、世界にある課題に誠実に取り組むこと」であると確かめ合われました。それから10年後の2022年開催予定の宣教協議会では、「宣教・牧会の実りの収穫感謝として分ち合うこと」、そして「これからの宣教方針、方向性」を探っていくことになります。
 2023年、東京教区は宣教100周年の年を迎えます。宣教協議会開催の時にはその成果も踏まえて次の100年の歩みを探り、宣教の使命を果たしていきたいと願います。

3 「原発のない世界を求める国際会議」声明に賛同する件
  「原発のない世界を求める週間」設置の件

 日本聖公会は、脱原発と自然エネルギーへの転換を目指すこと、そして未だに決して解決したとは言えない2011年3月の出来事を風化させることなく、むしろ、あの出来事が語ることを聴き、学び、いのちを尊び、平和に生きる社会の実現へと歩み続け、「被造物の本来の姿を守り、地球の生命の維持・再生へのたゆまぬ努力を意識し、決意を確かめ合うものです。

 前回宣教協議会は東日本大震災発生の翌年に開催され、当初予定のテーマが大きく変えられました。次回宣教協議会、そしてランベス会議(全聖公会主教会議)が2022年開催予定ですが、コロナウイルス感染症が世界中を脅威に晒し始めた二年後です。
そこに、私たちは改めて「いのちの宗教であるキリスト教」、そして「いのちに仕え、守り合うためにつながり」を心に刻み付け、それに基づいた例え小さくても具体的な働き、動きを生み出していきたく祈ります。

 冒頭に記しましたように、重要な三つの議案を取り上げましたが、私たち一人一人が日本聖公会のメンバーであり、キリストの肢でもありますので、どうぞ関心を持っていただけることをお願い申し上げます。
また、今回の総会はコロナ禍ゆえに、これまでとは異なる形式での開催となります。どうぞ、そのこともお祈りの内に加えていただけますようお願い申し上げます。

 なお、「日本聖公会第65(定期)総会を前にして」と題して、植松誠首座主教が書かれた文書が「管区事務所だより」(http://nskk.org/province/)から、また、「法規一部改正」について北海道教区で行われた勉強会の様子が、聖アンデレ主教座聖堂のホームページよりご覧いただけます。

日本聖公会東京教区主教
主教 フランシスコ・ザビエル高橋宏幸